以前「最高の結果を出すKPIマネジメント」という本を読んでから、KPIについてもっと深く学んで、仕事に活かしたいと思い、読みました。前述の本が「KPIとは何か?というレベルから、その設定方法やKPIマネジメント全体の流れを知ることができ、初級編から中級編という印象でした。さすがリクルート社内でKPIの講師をされていた方が書かれた本だと感銘を受けました。↓↓↓
一方今回のこの本は、「人間の奥底にある感情や本音(インサイト)を探り出し、そこからKPIマネジメントのストーリーを作成する」という手法が紹介されています。表面的な意識や行動や、ちょっと調べればわかるようなことをKPIに設定しても意味がないということを、実例を交えながらわかりやすくその手法を説明されています。
・KPIの意味は知っているけど、どうやって決めていけばいいかわからない方
・KPIを設定して仕事をしているけども、あまり効果が出ていない方
・そもそもKPIに設定している内容が「これでいいのか?」と疑問を感じている方
・KPIは達成しても、KGIの達成にうまくつながらない人
このようなことに悩んでいる方には最適な本で、役立つと思います。
著者は、神戸大学経営学部卒。丸紅株式会社で新規事業開発業務を担当。外資系ブランドコンサルティング会社を経て、現在は国内コンサルティング会社の執行役員に従事。これまで国内コンサルティング会社のプロジェクトの統括役として多岐にわたるプロジェクトを担当。現在は同コンサルティング会社において、人材育成事業の統括、重点企業のプロジェクト統括、及び外部企業とのアライアンス構築業務などに携わる。
この本で特徴的なのは、先述したインサイトやストーリーからのアプローチだけでなく、豊富な実例にあります。
日本航空株式会社(V字回復で有名)、株式会社丸井グループ、株式会社あさひ(自転車屋さんですね)、小林製薬株式会社(CMでお馴染み)、株式会社サイゼリア(イタリアンレストラン)、ハウステンボス株式会社、株式会社SBI証券など、有名企業がどのようなKPIマネジメントをおこなったのかが、詳しく書かれています。
そこで働かれている方との対談(インタビュー)もあり、そのKPIを設定した背景や、発生した問題、そしてその問題をどう乗り越えて解決してきたか、など活きた情報を得ることができ、
本書で書かれているKPIマネジメントの実用性を確認
することができます。何によりそういった実例があると、自分の会社にも適用する際にとても参考になります!
また、KPIマネジメントをするとき、トップダウン型とボトムアップ型の2つのアプローチがありますが、この本は完全に
ボトムアップ型のアプローチです。
KPIの設定対象として、複雑な人間的意識や感情などが入りやすい場合や、トップライン(最前線)を伸ばしていくという「積極型」の指標を作る際、このボトムアップ型アプローチをとることが多いと著者は書いています。
ポイントとして、
・KPIと聞くと「机上の話」「小難しい概念論」「数値的な世界」を想像してしまう。
しかし、この本は
・人の心理が出発点
・現場でのリアリティ
・再現できる方法論
この3つをKPI作成のアプローチのベースとしています。
つまり、「あるべき論」の押し付けではなく、人の奥深いところにある本音や実情や気持ちを大切にし、会議や机上ではなく、あくまで行動(業務・アクション)を起こす現場の人の現実を踏まえている。そして誰でも同じやり方を行えば、誰もが成果が出せる方法が書かれているのです!
・KPIとは、
「事業目標の達成に向けて、ムダなく行動するために集中する点を明確にし、その進捗を測るためのもの」である。
・KPIの種類→この本では、KPIを3つのレベルに分けて書かれています
①KFI:Key Financial Indicator 最重要財務指標
②KRI:Key Result Indicator 重要結果指標
③KAI:Key Action Indicator 重要活動指標
前回ご紹介した本では、KGIとCSFが主な登場指標でしたが、ちょっととまどいますね。でも大丈夫です。前回のは、こんな感じ↓
つまり、KFIが財務的でない場合は、KGIでオッケーです。
なんだかんだ言って、KGIが「売上」や「利益」や「費用」のようにお金に関係することが多いので、その場合はもう「KFI」としておこう ということです。
KRIは、上のメモでは、KPIと考えてもよさそうです。
ニュアンス的には、「あるべき状態」(KR:Key Result)を数字で表したもの。
KAIは、実際にKRIの結果(あるべき状態)を得るために起こすアクション・行動の指標ですね。このへんは、以前ご紹介した「鬼速PDCA」も読まれると非常に理解しやすいです!
「KPI設定の順序」
・KPIは、ストーリーから考える
3つのKPI(KFI、KRI、KAI)を戦略的に機能する形でつなぐために必要な作業。それが「ストーリーを考える」という作業。
「正しいストーリー」を作るための十分な情報やデータが最初からそろっていることなどめったに無い、稀(まれ)である。だから深く考えて、推測することが重要。
この本では、例として
目的:新規顧客の開拓による、売上の獲得
あるべき状態:「とにかく一番身近に居てくれるから便利」と思われている状態を作ること
として、取り巻く主なステークホルダーの意識や状況を洗い出し、KPIマネジメントを成功させるストーリーが書かれています。とてもシンプルに書かれているけどわかりやすい内容です。
あー、ストーリーってこういうことか。こうやってKPIを設定していくんだ。ということがなんとなくわかります。
この「なんとなく」が「だいたい」になり、「完全にわかる」という状態に本を読んでいくうちになっていきました!
・KPIマネジメントではインサイトが欠かせない
インサイトとは、
・表面に現れていないもの
・未だ気づいていないニーズ
・建前ではなく本音の部分
・刺激によって出てくる感情(心のツボ)
人を動かすためには、深層を感じること。「学習する組織」の著者ピーター・センゲの名言である。『人を動かすためには、表層的な気づきを超え、もっと深い場所で何が起こっているのかを感じ取ることこそが重要である』
以前「入門」編をご紹介しています。一生近くに置いておきたい深い1冊です。
ちなみに、インサイトの反対語は
パーセプション(perception)
・表層的に見えているもの
・顕在化しているニーズ です。(本文より)
・KPI策定の具体的なステップ
①「事業の大目標」をKFIとして設定する
※活動の大目的が「財務的な成果」でない場合、KGIとして設定。
②対象事業に関わるステークホルダーのインサイトを探索する
インサイトを要素として探索した後は、それらの関係性(因果関係)について構造化する(構造化する→図にしてわかりやすくする)。
③棚卸ししたインサイトをもとに「あるべき姿(KR)」を導き出す
短期で追うKRと中長期的に追うKRがある。混同せずに使い分けること。
④「あるべき状態(KR)」を実現するための「キーアクション(KA)」を導き出す
インサイトをしっかりと踏まえ、KRの実現に貢献するキーアクションを導出する。
複数案出して、その中から筋のいいと思われるものをチョイスする。
⑤KFI(KGI)、KR、KAを波及効果で連結し、「ストーリー」としてまとめる
KFI、KR、KAをつなぎ、ストーリーの背骨にあたる部分を作り、そこからさらに期待できる波及効果や、新たに見えてきた阻害要因、ストーリーとして弱い部分を見極め、ストーリーを発展させていく。
「本当にこのストーリーは機能するのか?」と、健全な自己否定精神を持って進めること。
⑥KR、KAに、測定可能な指標を施し、計測プランを立てる
ストーリーの完成後、最後に「あるべき状態(KR)」と「キーアクション(KA)」に、測定可能な指標を設定し、測定手法(調査手法、対象者、周期など)を決める。
KRについて、直接測定が難しい場合は、「代替指標」を検討する。
※「代替指標」については、本書で詳しく説明されています。
著者は、人材育成事業については、プログラムの開発と共に、講師も担当している。同社グループ企業内(連結1万7000人)において、圧倒的実績トップのビジネス研修講師として、年間数十社にわたる企業の人材育成に携わっています。青山学院大学専門職大学院国際マネジメント研究科 非常勤講師(2015年度、2016年度)なども務めた。
何かをマスターするには、その分野に関する本を5冊は読まないといけないと何かの本に載っていました。鬼速PDCAも入れると、この本が3冊目になります。順番としては非常に良かったです(たまたまですが。。。)
KPIマネジメントに関して基礎的な知識はあるけど、もっと実践的な内容を知りたいという方にはとても役立つと思います。おススメです!
アマゾンで詳細を見る
楽天で詳細を見る
人と組織を効果的に動かす KPIマネジメント (楠本 和矢)